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アマゾナス・エン・テンポ紙 2008年6月17日 日本語訳

エン・テンポ紙 紙面

(1面) 期限切れ

国立アマゾニア研究所(INPA)はバイオ密輸容疑者に昆虫を返還 判決が出ないため日本人のショージ・ハシモトは七年前連邦警察に押収された数千の昆虫標本を受け取った。 環境 C8ページ (写真の説明文) 昆虫標本の返還はINPAの研究員たちにとって胸を痛ます出来事であった。 (C8ページ) 司法当局は国立アマゾニア研究所(INPA)に対しバイオ密輸容疑者へ昆虫の返還を命じた アマゾナス地方裁判所はアマゾナス州で活動していたバイオ密輸容疑者ショージ・ハシモトを裁くのに時間が掛かりすぎ訴訟は時効となってしまった レナン・アルブケルケ(ア・エン・テンポ紙記者)

2001年8月からアマゾンに於けるバイオ密輸容疑の日本人ショージ・ハシモトはアマゾナス州地方裁判所からプレゼントを与えられた。アマゾナスとパラー両州の自然界から4千匹以上の昆虫を不法に採集したとして七年前に逮捕され、当時保釈金を支払い釈放されていたが、今日何の代償も無くブラジルのいかなる学術研究機関の許可も無いまま、当時採集していた標本の全て(その多くは同地方にのみ生息する希少な種)を受け取る事になったもの。アマゾナス州司法当局と連邦司法当局のいずれからも裁判で裁かれることも無く訴訟は時効となったのである。

2001年にハシモトは連邦警察により逮捕され、同時に押収された4千近い数の昆虫標本は、多くの種類で構成され、ブラジル学術関係や環境監視を担う連邦政府環境・資源省(IBAMA)の合法的許可も受けずに採集されたもので、逮捕された同日に国立アマゾニア研究所(INPA)へ送られ、以来保管されていた。同研究所の研究員で昆虫学修士のカタリーナ・モッタ女史らにより識別作業がなされてきたが、「標本と研究機材は我々により管理されてきて、これまで4千点のうち約千点が識別されてきたのに、司法当局の命によりショージは全て持ち去ってしまう。悲しいことだ。」

カタリーナ女史は2001年に日本人が逮捕された時から同件に関わってきた。女史によればハシモトはAM-010州道38km地点から入った脇道付近で採集を続けていたと言う。女史とサンパウロ大学のクラウディオ・ルイ・フォンセッカ動物学博士とともに日本人に採集され連邦警察に押収された標本の評価を任されてきた。そして標本の評価だけでなく、その自然界での分布について、またハシモトが駆使してきた採集方法等に関する技術調書の作成を依頼されていた。

作成された調書の目的は、バイオ密輸の裏付けで、裁判が遅れ時効にならなければ日本人は有罪になっていた筈であった。この様に昆虫の密輸は裁判で裁かれる事無く、ハシモトにより捕獲された4千点に上る甲虫と蝶の標本と高価で素晴らしい電子機材は彼に返還され、再び昆虫の採集に使用されるであろう。

ア・エン・テンポ紙が入手した調書のコピーに依れば、研究員たちはハシモトがアマゾンに於いてバイオ密輸に関わっていた事は明らかであり、その理由として同一種の標本の数が極めて多く、それも商品価値が高い大きさの昆虫が揃っている事にある、としている。前出のカタリーナ女史とフォンセッカ博士は口を揃えて「技術調書は、押収された昆虫標本は商業目的の物である事を指摘している。ハシモトの標本コレクションは綺麗で見栄えの良い物が揃っていて、商業目的である事は疑いようが無い」と言い、同調書は裁判で証拠として使用される筈だった。

更に「通常アマチュアのコレクターが趣味や道楽で昆虫標本を作製する場合、同一種の標本は極めて少数であり、2001年に州道AM-010号で警察に逮捕されたこの日本人の場合には当てはまらない」と結論付けている。 連邦警察の捜査ではこの調書は重要な証拠としての役割を持ち、日本人による昆虫不法販売を裏付けるものであった。ハシモトの不法行為に関する多くの情報を盛り込んだこの書類も訴訟の時効と共に不要となった。

「我々学者が研究をするには、ブラジル環境・資源省(IBAMA)の許可を受けなければならず、それが無くて自然の生物を採取すれば逮捕も覚悟しなければならないのに、この外国人達は勝手にやって来て勝手な事をやっても何の処罰も受けない」と国立アマゾニア研究所(INPA)の無脊椎動物課責任者アウグスト・エンリッケスは嘆く。また「本件は重要な前例と成り、以前同様の行為でアマゾンの自然から動植物を無許可で採取し罰せられた者共も、当局に対し返還を要求できる事になろう」とも語った。 * 写真説明その1 裁判の遅れにより4千の昆虫と機材はアマゾンで活動していたバイオ密輸容疑者へ返還される。 * 写真説明その2 「標本の識別と札付けに従事してきたが、この度の裁判所からの命令でショージは全部持って行ってしまう。とても悲しいことだ」と語るINPAの昆虫学修士のカタリーナ・モッタ女史 アマゾンの生物はWEBサイトで売買される州道AM-010付近で許可無く生物を採取していたとしてショージ・ハシモトが連邦警察に逮捕された当時国立アマゾニア研究所(INPA)のトップは、現在ミナス・ジェライス州にあるウベルランディア連邦大学教授を務める著名なブラジル人科学者のワーウィック・エステーヴァン・ケールであった。

同氏は日本人がマナウス市東部のペトロス区コスメ・フェレイラ通りにあり許可無く営業していた「自然科学博物館」のディレクターとして活動していた事を知った。逮捕時研究者を名乗ったハシモトは、内国科学技術振興評議会(CNPq)のLATTESプラットフォームに登録されてもいなかった。このプラットフォームは、ブラジル中の全研究者の履歴書を纏める事を目的とした技術基盤となるようにその名前が付けられたもの。連邦警察と共にINPAの首脳たちは、2001年にハシモトが所持していたマイクロ・チップスが珍しい昆虫をモニタリングして捕獲を容易にし、インターネットで販売する目的だったと推察していた。これらの情報は逐一連邦警察に提供されていた。ウェブ上では少なくとも2つの大規模サイトが熱帯生物標本の売買に使われていたという。アマゾン特有の蝶の標本は、CDや書籍を購入すると同様簡単に買い付ける事が出来るのだ。インターネット販売の価格はその希少さや雌雄により8米ドルから1500米ドルの値がつく。

「人々は、生物層上の学術的重要性には気付かず、甲虫や蝶の標本を飾りに使ったり額に入れて飾る為だけで購入するのだ」と語るのはINPAの研究員カタリーナ・モッタ女史。 INPAは司法当局の決定に不服 アマゾナス州地方裁判所(TJ-AM)により本件が審査されていた期間中、国立アマゾニア研究所(INPA)はショージ・ハシモトから押収された蝶と甲虫の標本を保管してきた。

同研究所の所長代行のワンデリ・ペドロ・タデイにとって、裁判所の決定には従う事しか道は無い、という。「裁判所の命令は疑問を持ったり、不服を唱えたりする事はかなわず、服従するのみである。我々もその通りにする。この期間中ずっと蝶や甲虫とその捕獲に(ハシモトに)使用されていた機材の保管者としてやって来た。本研究所は水曜までに保管していた全てを彼(ハシモト)に返還するであろう」とアマゾン熱帯病研究が専門のタデイは語った。

(取材協力 ミシェレ・ゴウヴェイア) * 写真説明 司法当局の決定を受けてハシモトに返還すべく標本を積み上げるINPAの科学者インタビュー  アウグスト・エンリッケスアマゾンに生息する数多い種類の生物は、国立アマゾニア研究所の研究者達の努力で毎年約3万点が新たに識別登録されている。昆虫学博士で同研究所無脊椎動物課長の科学者アウグスト・エンリッケスによれば、これらの活動は科学的重要性の観点からマナウスの標本コレクションのレベルを、150年の歴史を持つ隣州のエミリオ・ゴエルディ博物館にも匹敵させるものだという。 40年に亘る研究活動で我々の標本数は3百万点に上り、更に年々増え続けている。その内昆虫標本は2007年には7%増大し40万のオーダーを超え、今日では41万6千点が登録されている。

「(コレクションを増やす)我々の使命は重要であり、識別登録された情報は学術界に提供されると共に本研究所の地位を確立させるものだ」と語るエンリッケスは、現在MUTUCA(ハエの一種)の研究・登録に従事している。「例えば世界には4200種のMUTUCAの仲間が存在していて、ここINPAでは約200種が既に登録されているが、その数はずっと増え続けている」と語る教授は修士課程の学生たちを指導し、アマゾンで採集される昆虫の研究活動に貢献している。「かつてアマゾンの動植物を許可なく採集した罪で罰せられ標本を没収された他の人々に前例となって当局に返還を求める道をつくった」— INPA無脊椎動物課長 AUGUSTO HENRIQUES

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